2015/16チャンピオンズリーグ決勝 生観戦(後半・延長戦)
前回の投稿の続き。2015/16チャンピオンズリーグ決勝の後半。
後半アトレティコは、ボランチのアウグストに代えてカラスコを投入した。アウグストのポジショニンには、コケが入った。
シメオネ監督が取っておいた切り札だ。
後半開始早々に、グリーズマンからトーレスへの素早いパスに対応したペペが、トーレスを倒してPK。ペペはそれほど抗議することもなく、「やってしまった。」といった感じだった。
しかし、グリーズマンはPK失敗。
レアルはどれだけ運も味方につけるのか。
その後、カルバハルが怪我でダニーロに交代。
アトレティコは、グリーズマンだけでなく、カラスコも起点となり、攻撃のバリエーションが増えた。
再三、カラスコとフェリペ・ルイスで左サイドを攻めるが、二人のコンビネーションは決して良いものではなかった。
そして、試合展開は引いて守ってカウンターをするレアルと、ボールを持って攻撃するアトレティコという予想とは、逆の展開となった。
レアルは無理に攻めようとしない、失点しないことを一番に考えている。冷静に相手の出方を見て耐えている。
アトレティコが点を取りに前がかかりになりバランスを崩した時に、一気にスピードを上げてカウンターをする。
アトレティコはサイドからクロスを上げたり、ミドルシュートを狙うが決定的な場面は作れない。
そんな展開が続き、
試合終了まで残り10分。
アトレティコが同点ゴールを決めた。
ファンフランが、ガビとのワン・ツーからマルセロの裏を取って、クロス。
一番外側から飛び込んだカラスコがゴールを決めた。
同点ゴールというだけでなく、得意のカウンターを塞がれ、引いて守るレアル相手に決めただけに、貴重なゴールとなった。
マルセロは、攻撃力の高さを見せつけていたが、守備の弱さも見せてしまった。
その後は、レアルも点を取るために前かがりになった。
アトレティコ陣地でFKのチャンス。
終了間際もあって、今までは5人カウンターに備えて残していたが、今回は3人。
FKのクリアボールは、スピードのあるカラスコが拾った。
拾った途端にスピードに乗り、DF2枚を振り切った。
ハーフラインあたりで一瞬にして、3対1のカウンターのチャンス。
レアルからすれば、一本パスを通されれば失点のピンチ。
この絶体絶命のピンチを止めたのは、なんとFKにヘディングで合わせるために、ペナルティエリアまで上がっていたセルヒオ・ラモスだった。
FKのボールがクリアされ、カウンターのピンチになると察したセルヒオ・ラモスは、全速力で戻ってきたのだ。他の選手はファールもせず振り切られる中、見事としか言いようがない、ファインプレーだ。さらにすごいことに、後ろからスライディングしたにも関わらずイエローカードだった。
セルヒオ・ラモスも、レッドカードも覚悟したと思う。僕個人的にいえば、レッドカードでもよかったと思う。
しかし、審判の判断としては、ゴールからはまだ遠く離れていたので、決定機阻止で退場とまでは考えなかったのだろう。
ガンを広がる前に、取り除いてしまうように、セルヒオ・ラモスはカウンターの芽を摘んだのだ。
セルヒオ・ラモスのファインプレーもあり、
1-1のまま延長戦に突入した。
両チームともに、疲れが見えた延長戦だったが、アトレティコのカウンターが炸裂しそうになるとイエローカードで止めるという場面が2回もあった。
レアルの選手たちは、計算されているかのようにイエローカードをもらってない選手がイエローカードをもらうので、誰も退場することがない。
こういったところの勝負の分かれ目を心得ているあたりが、欧州制覇10回を誇るレアルマドリードの伝統と経験なのだろうか。
勝負強く、勝ち方、負けない戦い方を知っている。感情的になり判断を誤ることはない、いつも冷静で現実的な判断を下す。
延長戦、スタンドで行われている両チームの応援が興味深かった。
アトレティコは、例の如くシメオネが両手を振り上げて、観客を煽る。
すると、スタンドの先頭にいる応援リーダーであろう人たちが、シメオネの姿に感化され、ミニシメオネとなって、大勢のサポーターを煽るのだ。
スタジアムはミラノにあるサン・シーロなのだが、そこはもはやアトレティコのホームビセンテカルデロンのような雰囲気になる。
観客もレアルの方が多いはずだが、アトレティコサポーターの大声援で、アトレティコのホームとなったしまうのだ。
このエネルギーには驚いた。
きっとピッチにいる選手たちにも伝わるだろう。
ここで予想もしなかったことが起きた。
この雰囲気に耐えられなかったセルヒオ・ラモスが、なんとシメオネの真似をしたのだ。
両手を振り上げて、観客を煽った。
「この雰囲気にのまれたらまずいって。みんなも声を出してくれ。」こんな気持ちだったのか。
すると、それまで声を出していなかったレアルサポーターがセルヒオ・ラモスに応えるように声を出し始めた。
しかし、普段やっていないことをやったせいか、その声援は明らかに小さかった。
それを見かねたアトレティコサポーターは、
「真似をするな!」と言わんばかりに、倍以上に遥かに大きな声を出し、レアルサポーターの声援を打ち消した。
すごいエネルギーだった。
アトレティコサポーターの並々ならぬプライドを感じた。
そんな応援合戦も虚しく、
みなさんの知っての通りアトレティコはPK戦の末敗北してしまう。
初優勝もリベンジも果たせなかったが、主力選手の移籍もあったにも関わらずシメオネのアトレティコは2年前に比べ格段に成長していた。
互角以上の戦いをしたが、たった一つ結果だけがついてこなかった。一番重要な結果だけだ。
常々シメオネは、
「決して信じることを辞めるな。」
「信じれば、できる。」
という言葉を口にしている。
来シーズンもシメオネの挑戦から目が離せない。歴史を変えることはできるのか。
そして、ずっとテレビで見てたビッグイヤーを掲げる瞬間がやってきた。
初めて目の前でビッグイヤーを掲げる瞬間。そのチームはレアルマドリードだった。
最多11回目の欧州制覇となった。
レアルマドリードといえば、ペレス会長のもと、毎年ビッグネームを獲得する。
誰もが欲しい選手を、最高額を叩いて獲得する。
選手の価値を計ることができるのは、年俸や移籍金しかないのであれば、たしかにレアルマドリードは世界で最高の選手を揃えたチームである。
今年は世界で最高の選手を揃えたチームが、世界一になったということになるのだろうか。
レアルマドリードを深く知る人が言っていた。今年は世界で最も価値の高いチームが優勝したと。
「価値」
サッカークラブにおける、サッカー選手における「価値」とはいったいなんなのだろう。
今回は1大会空けての優勝だったが、
レアルマドリードは2001/02の優勝から2013/14の優勝までは、11年間世界一から遠ざかっていた。
果たして、来シーズンはどこのクラブがビッグイヤーを掲げるのか、今から欧州リーグの行方が楽しみである。