2015/16チャンピオンズリーグ決勝 生観戦 (前半)
こんにちは。
前回の記事から、丸1ヶ月。
ご無沙汰しております。
ユーロフランス2016のベスト4が決まり、盛り上がってる最中に申し訳ありません。
今更おせーよ!!という言葉が飛んでくることは承知の上、
2015/16チャンピオンズリーグ決勝生観戦について書きたいと思います。
世界一のクラブを決めるのは、トヨタカップではありますが、クラブの規模やヨーロッパに集まる選手の質を考えれば、実質チャンピオンズリーグが世界一のクラブを決める大会といえます。
世界一のクラブが決まる瞬間をその場で観て、いろいろ感じるものがありました。
今回は、前々回大会と同じマドリードダービー。
同じ街にあるチームだが、
裕福な階級に支持されるレアルマドリードVS
の戦い。
前々回大会では、1点をリードしていたアトレティコマドリードに、レアルがロスタイム終了間際に追いつき、延長戦で逆転勝ちをした。「我々が王者だ。」とレアルが勝負強さを見せつけた。
あと一歩のところで、優勝を逃したアトレティコマドリード。その雪辱を晴らすために、今回リベンジに燃えていた。
組織的で固い守備と鋭いカウンターを武器に、準々決勝でバルセロナ、準決勝でバイエルンと優勝候補を倒して来ただけに、アトレティコのリベンジに期待値は上がってきた。
レアルはシーズン途中で交代したジダン監督が就任してから半年。アトレティコのシメオネ監督は就任してから4年半。
チームの完成度からいえばアトレティコの方が上である。
それでも、クラブの規模や経済面、選手の能力を考えるとレアルが優勢というのが、大半の予想であった。
初優勝を目指すアトレティコ。
欧州制覇11回目を目指すレアル。
同じ都市にあるが対象的なファンに支持されるクラブ、戦術面や前々回大会と同じカードであることなど、いろいろな面から見ても、注目の一戦だ。
自分の予想は、2-1でアトレティコ勝利の予想であった。
アトレティコの守備は固い、しかしレアルの選手たちの能力を考えれば1点は取れる。
アトレティコのカウンター攻撃なら、2点は取れる。
そんな単純な考えからだった。
ただ、レアルがクロスを多用してくれば、2-2もあり得る。特にフェリペ・ルイスのところをベイルの頭で狙われたら、失点する可能性が高い。なぜなら、フェリペ・ルイスは、準決勝2legで、決して高身長ではないビダルに競り負けていたからである。
2-2で延長戦になれば、どちらが勝つかわからない。
こんな予想をしていた。
アトレティコ側のスタンド。
レアル側のスタンド。
セレモニーとアンセムが終わり、キックオフの笛が鳴った。
僕は、キックオフ開始直後の5〜10秒を注視する。最初のワンプレー、ツープレーで、どっちが優勢か、どっちに勝利の可能性が高いかを判断する。
選手の動きや勢い、ボールの運び、互いのボディコンタクトのパワーなどを見て感覚的に、
「どっちの方が行きそうだな。(勝ちそうだな。)」と判断する。
アトレティコのキックオフ。
すぐに後ろにボールを下げた。
右のセンターバックに入ったサヴィックが、ボールを持ちロングボールを蹴ろうとするが、ベンゼマの素早いプレスに当たり、アトレティコボールのスローイン。
スローインから、レアルボールになりそうなルーズボールをコケが猛ダッシュで触りに来た。遅れ気味かつ足の裏を見せたタックルはファールとなった。
「やってやるぞ。」
という気合いの入ったコケのプレー。
ベンゼマのプレスといい、コケのタックルといい、両チームともに気迫が込められていた。
僕の印象は「互角」というものだった。
前半25分くらいまでは、レアルペース。
右から左、左から右へとスペースのあるところへボールを動かしながら、前進していく。
レアルのボール回しは見事だった。
全員が俯瞰でグラウンドを見ているかのように、アトレティコの選手がいないスペースにボールが流れていく。その度に、「そうだ。そうだ。」と言っているように拍手が会場に響く。
レアルが自陣でボールを奪い、すぐにアトレティコの選手2、3人に囲まれてもボールを失わないモドリッチとクロースはさすがだった。
「いいぞ。いいぞ。」という意味の拍手がまた会場に響き渡る。
きっとグラウンドに足を運んだレアルサポーターの子供たちは、知らぬまにサッカーを学んでしまうだろう。
拍手が起きた、このプレーはいいプレーだ。
ヤジが飛んだ、このプレーは悪いプレーだと。
レアルサポーターは、非常に冷静な批評家といった感じだ。
良いプレーには拍手。
悪いプレーには、ブーイング。
敵の汚いプレーや審判の相手寄りのジャッジにもブーイング。
よくゲームを観ている。
そして、思ったことをピッチに伝える。
対してアトレティコのサポーターは、
とにかく歌って、声を張り上げて、ピッチにいる選手にエネルギーを送って、背中を押している感じだ。
共に戦うんだ。というスタイル。
レアルのサポーターは、そんな声を張り上げるアトレティコサポーターを横目に見て、こっちも負けじと声を出すぞ、といったことはなく、「そんなに騒いで。静かに見れないのか。」といった冷めた目をしていた。
先制点は、前半15分にレアル。
フアンフランが、ペナルティエリアから少し離れたところで、ベイルを後ろから押してファール。
正確なボールを蹴れるクロースのボールをベイルが後ろにヘディングをし、GKオブラクの前でセルヒオ・ラモスが触ってゴール。
セルヒオ・ラモスがオフサイドであったという話もあるが、ゴールはゴールである。
セルヒオ・ラモスがシュートする前には、ベイルがフリーでヘディングしている。
マークはフェリペ・ルイスであった。リプレイで見てみると、トーレスが邪魔になって、フェリペ・ルイスはベイルをフリーにしてしまっているが、たとえついて行っても高さでは劣っていただろう。
フェリペ・ルイスではベイルを防ぐことはできなかったとなると、この失点を防ぐには、そもそもこの位置でレアルにFKを与えないということが重要であったと思う。
このFKの一つ前のFKもペナルティエリア付近のからで、ベイルのボールからカゼミロがフリーでシュートを打ち、オブラクが正面でクリアするという決定的な場面を作られている。
高さに有利があり、正確なボールを蹴れる選手がいるレアルに対して、アトレティコはペナルティエリア付近のFKは避けなければいけなかったのだ。
しかし、ファンフランは前を向いていなければスピードに乗ってもいないベイルにファールをしてしまった。
結果的にいえば、この軽率なファールが失点の一番の原因といえる。
レアルの選手たちは、このファールをもらった時、しめしめと思ったことだろう。
ベイルとマルセロは、ファールのあとナイスと言わんばかり拳と拳を合わせている。
対してレアルの方は、同じような場面でトーレスが後ろ向きにボールを持った時でもファールはしない。前を向かせないように、マークをして、中盤の選手と挟んで取る。アトレティコにも、ヘディングの強いゴディンがいるため、ペナルティエリア付近で不用意にファールをしないことは、レアルにとってマストであったといえる。
ペナルティエリア付近で、FKを与えず守れるか守れないかといった点で、勝負に対する経験値や賢さがレアルDFの方が上だった。
レアルが先制してからは、次第にアトレティコがボールを持つ時間が多くなった。
心理面が大きいのだろうか、先制したチームは守りに入り、追いつきたいチームが押し込むケースがサッカーでは多いが、この試合も30分を過ぎたあたりから、アトレティコが押し込む時間が増えた。
しかし、決定的な場面はなかなか作れない。
グリーズマンが時おり打つ、ペナルティエリア外からのミドルシュートだけだった。
試合を観ていて違和感が一つあった。
「アトレティコのカウンターが出ない。」
アトレティコがボールを奪った直後、ペペとセルヒオ・ラモスは、二歩、三歩と後退していた。
その後もレアルのDFラインは少しずつラインを下げていく。
ペナルティエリアから、5〜15m辺りにラインを取り、背後にボールを出させない。
前線の選手も前ですぐにボールを取り返そうとしない。ゆっくりと下がっていく。
フィールドプレーヤー10人が自陣にしっかりと収まっている。
ずるずると下がる4バックの前に、3ボランチのようにカゼミロ、モドリッチ、クロースがスペースを埋める。危険なエリアに入ってきた選手を3人で受け渡しながら、マークをする。よって、裏を警戒していながら、トーレスの足元にも簡単にパスは通らない。もともとトーレスはポストプレーが得意な選手ではないから、背後のスペースを消されてしまうと、ただ立ってるだけの選手になってしまう。レアルDFの背後を狙ったボールがいくつか出ているが、ラインが低いためDFラインを超えることなく、ヘディングでクリアされている。そして、セカンドボールが落ちるエリアには、3ボランチが待機しているので、ことごとくレアルボールになる。
また、あまりにも両チームの守備の重心が後ろだったので、オフサイドの数と相手陣地でボールを奪った数を数えてみた。
オフサイドの数が少なければ少ないほど、ラインは深く守備の重心が低い
相手陣地でボールを奪った数も少なければ少ないほど、自陣でボールを奪っていることになるので、守備の重心は低い。
相手陣地でボールを奪った数はレアルが2回、アトレティコが3回。
極端に少ない数字といえる。